Anjin ABE - 安倍安人

#003 彩色 徳利 - 富士の図 -

イメージサイズ 高さ×幅
13 × 8 cm

技法
陶芸, 備前焼


・備前焼きとは、、、
備前焼は「日本六古窯」の中でも最も古い焼き物。絵付けや釉薬(うわくすり)を使わない究極にシンプルな焼き物。産地岡山では「備前すり鉢、投げても壊れぬ。備前水瓶、水が腐らぬ。備前徳利、お酒が美味い。」と言う言い伝えがあり、最近では科学的根拠があることで話題に。

・「陶芸とは焼き物、備前焼とは焼き固める。」
安倍は陶芸の基盤となる窯作りを独学で試行錯誤を繰り返しながら何度も窯を築いた。そうして辿り着いた窯が完全地下式窖窯である。焼成法にも特徴があり、窯の温度を急速に1350度まで上げたら、そこからは薪を焚べず火が消えるまで待ち一旦冷ます。そしてまた火を入れる。この工程を幾度となく行い焼き固める焼成法ならば松割木は100束ほど(通常1000束)で済み、環境にも優しい。作品の表面に見られる多彩な色調やマチエールなどの窯変(ようへん)の豊かさは胡麻(ごま)、棧切り(さんぎり)、緋襷(ひだすき)などの備前焼伝来の窯変が表されているが、安倍の作品の特徴は装飾とフォルム、マチエールとボディが分かち難く結びついている。

・現在地
1938年大阪に生まれ、4歳から高校卒業まで愛媛県西条市に暮らし、1986年に岡山県牛窓に窯を築く。
安倍は質朴で剛健な作調の古備前を新たな形で現代に生み出すまでの技法を研究の末、成し遂げた。さらに近年制作する色彩備前は宝石のように輝きを放ち、備前焼を現代アートへと昇華させた。安倍は藤原啓、藤原雄、金重陶陽の3人の無形文化財保持者(人間国宝)と並んで現代備前陶芸家として高く評価されている。しかし彼ら陶芸一筋の家系と違い安倍は洋画家として始まり、彫刻を制作し、さらに独学で窯を開いて今日の地位を築き上げた稀な作家歴を持つ。また彼は魯山人のようにどの道にも超一流である。

・普通両立しない「自由奔放思考と緻密な作陶」
安倍安人は伝統を重んじて作品の原点を理解している。安倍の備前焼には、400年前の桃山時代の古備前の美意識が咀嚼されて作品の芯を形作っているために完璧でいい加減な箇所がない。「焼き物は物理であり、科学の現象で成り立っている。」と言うだけあり、独学での研究により彼の焼き物の分子構造は古備前と違わない水準まで到達した。そして作品の向こう側に焦点を結んで鑑賞するように構成されているため、鑑賞者を不思議な思考に誘い込む。伝統を現代に表現し、その上で造形に発展していくという基本形を堅固に決め、現代陶芸の最先端を行く作家である。

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